『いつもと違う夜』(050528)


はっ、と目が覚めた。

真っ黒な夜空と、きらめく一面の星。
見慣れた部屋の天井とは全く違うその視界に、
一体自分がどこにいるのか、理解するのにしばらく時間がかかった。


ここは、2ばんどうろ。
少し小高い丘を選んで、リュックに詰め込んでおいた寝袋で
一晩を過ごすことを決めたのは、つい数時間前だったことを思い出す。
今の時期、夜はそんなに寒くないから、
次の町まで、しばらくはこのスタイルでも大丈夫だろう。


あんなに待ち望んでいた旅立ちも、
いざ、始まってみると、普通にしている自分がいて、
なんだか正直、あっけない。

いや、そうでもないか。
こうして、「あぁ、旅に出たんだなぁ」なんて思い返すと、
あらためて、自分のいるこの状況がリアルに感じられてきた。
そう、ぼくは、旅に出たんだ。


ふと、母親の顔を思い出す。
いつになく笑顔が元気さを増していたけれど、
なんだかそれが逆に強がっていることを示していた。
いかん、考えたら、鼻が痛くなってきた。

『かちゃり・・・』

動かした手が、腰にあるボールに触れた。
ぼくの大事な…パートナーだ。
なんだか、まだ、現実感が湧かない。
だって、あんなに待ち望んでいたものが、
この、あったかくも冷たくもないボールの中にいるなんて…

手にとって、掲げてみる。
ぼんやりとした月の光を受けて、
なんだか神秘的に輝いている。

憧れていた思いと、手に入れた嬉しさと、
新しいトモダチとのこれからの冒険を思い描いて、

きっと、今夜は眠れないんだろうな。



新米トレーナー@2ばんどうろ
ハルミ 050528

お話トップへ