まるで溶けてしまったのかのように、雲はどこにも無かった。 そして不思議なことに、月の光までもが姿を消していた。 星も、いつもはあるはずの場所を見ても、今日は見つけることができなかった。 いつもと違う夜空だった。 ニビシティに着いたのは、太陽がもう西の山に半分隠れてしまったころだった。 倒れこむようにポケモンセンターのカウンターに駆け込んで、 手持ちのポケモンを全部預けると、 張り詰めていた緊張の糸が一気に緩み、疲労がドッと押し寄せてきた。 仲間の回復を待つために座ったソファで、 1分も経たないうちに、眠ってしまっていた。 ジョーイさんの声でハッと目が覚めた。 今の時間を知りたくて、ふと見た窓の外は、 オレンジ色を飲み込んで、暗闇になっていた。 その色から、ぼくはなんとなく目を逸らせなくて、 全快した仲間を上の空で受け取ると、 フラフラと、足は屋外へ向かっていた。 ごろん、と、寝転がってみる。 丈の短い草や、ゴツゴツした小石があったけれど、 今のぼくはそれよりも、天井を覆う、この、神秘的な黒色に釘付けだった。 じっと見つめていると、フワリと体が浮き上がって、 そのまま宇宙に吸い込まれていきそうな、 不思議な気持ちになってくる。 広い広い宇宙の中、とっても小さな自分を想像して、 恐くなって思わずブルッと体が震えた。 そうしてようやく、自分が地に着いている事に気付いて安堵する。 すごく、澄んだ黒色だと思った。 黒色に澄んでるのとそうでないのがあるのか、 よく考えてみるとおかしい表現なのかもしれないけれど、 でも、とにかく透き通るような黒さだった。 透き通っているのに、どこまでも、黒い。 あぁ、宇宙の色なんだなぁって思う。 昼間は気付かないけれど、 いつも見る空色の壁の向こうには、 こんな世界が広がっていたんだなぁ。 宇宙を見た。 そんな夜の思い出。 新米トレーナー@ニビシティ ハルミ 050610
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