『夜空』(050610)


まるで溶けてしまったのかのように、雲はどこにも無かった。
そして不思議なことに、月の光までもが姿を消していた。
星も、いつもはあるはずの場所を見ても、今日は見つけることができなかった。

いつもと違う夜空だった。


ニビシティに着いたのは、太陽がもう西の山に半分隠れてしまったころだった。
倒れこむようにポケモンセンターのカウンターに駆け込んで、
手持ちのポケモンを全部預けると、
張り詰めていた緊張の糸が一気に緩み、疲労がドッと押し寄せてきた。
仲間の回復を待つために座ったソファで、
1分も経たないうちに、眠ってしまっていた。

ジョーイさんの声でハッと目が覚めた。
今の時間を知りたくて、ふと見た窓の外は、
オレンジ色を飲み込んで、暗闇になっていた。
その色から、ぼくはなんとなく目を逸らせなくて、
全快した仲間を上の空で受け取ると、
フラフラと、足は屋外へ向かっていた。


ごろん、と、寝転がってみる。
丈の短い草や、ゴツゴツした小石があったけれど、
今のぼくはそれよりも、天井を覆う、この、神秘的な黒色に釘付けだった。

じっと見つめていると、フワリと体が浮き上がって、
そのまま宇宙に吸い込まれていきそうな、
不思議な気持ちになってくる。

広い広い宇宙の中、とっても小さな自分を想像して、
恐くなって思わずブルッと体が震えた。
そうしてようやく、自分が地に着いている事に気付いて安堵する。

すごく、澄んだ黒色だと思った。
黒色に澄んでるのとそうでないのがあるのか、
よく考えてみるとおかしい表現なのかもしれないけれど、
でも、とにかく透き通るような黒さだった。

透き通っているのに、どこまでも、黒い。
あぁ、宇宙の色なんだなぁって思う。
昼間は気付かないけれど、
いつも見る空色の壁の向こうには、
こんな世界が広がっていたんだなぁ。


宇宙を見た。
そんな夜の思い出。



新米トレーナー@ニビシティ
ハルミ 050610

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