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02:パートナー
ザシュ…ッ!! 「!?」 何かを切り裂くような音と、 ぶ〜んぶ〜ん・・・という、むしポケモンの飛んでいく羽音が聞こえて、 ぼくは慌てて振り返った。 ぼくの背後では、 ヒトカゲが肩で息をして、キッ!と前方を睨んでいた。 視線の先には・・・逃げまどうスピアー? 「あ・・・そうか。」 やっと状況を把握する。 ぼくは、守られたのだ。 忍び寄るスピアーの影から。 トキワの森が、聞いていた以上に深いことに、驚いたというか、 正直、まいってしまった。 ほとんど一歩ごとに遭遇するむしポケモンのムレ・むれ・群れ!! 一体、今までのマサラ出身の先輩トレーナーは どうやってこの森を切り抜けたのだろうかと、聞きたくなってくるくらいだ。 キャタピー・ビードル・トランセル・コクーン… 数え切れないくらい、野生ポケモンとのバトルを繰り返す。 時々、気になる奴をゲットしたけど、 今はもうモンスターボールを使い切ってしまったから、 あとはひたすらトキワシティを目指すのみ! なのに、雨のような野生ポケモンの出現に、 一体いつになったら、出口にたどり着けるのやら見当もつかない。 バトルはヒトカゲしか出していない。 だって、他のポケモンは、ゲットしたばかりで体力がないんだもの。 そのため、ついさっき旅立ったばかりなのに、ヒトカゲの経験値はみるみるたまり、 あっと言う間にレベルが4つも上がってしまった。 もしかしたら、そんなヒトカゲの順調な成長ぶりを見て、 僕は油断していたのかもしれない。 一体これでビードルとは何回バトルしたんだっけ… とりあえず、数えるのもできないくらい、やったんだよな。 あはは、ぼくの通った所、むしポケモンがゴロゴロ倒れてるんだなー… …やめとこう、こういう想像は。うん。 『カゲーッ』 よっしゃ。 ヒトカゲ、良かったぞ、今の”ひのこ”! さっき覚えたばかりなのに、随分と上手くなってるじゃないか。 すごいよ! お前、絶対に将来、すっごく強いポケモンになれるよ!! ぼくが保証する! ガサッ ? 今、そこの草むらで何か・・・あーっ!! ぴ、ピカチュウだ…っ!! しっぽしか見えないけれど、 あの黄色くてギザギザなのは絶対ピカチュウだ!! 全国でも数の少ないポケモンと言われているけれど、 トキワの森に確か生息しているんだもんな、うん、間違いない!! あぁくっそ・・・そういや空のボールはもう持っていないんだっけ… 絶対欲しいのに・・・ ゲットできないなんて、なんてぼくはついてないんだろう!! あ、そういえば・・・!! いざ、という時のために、ボールを1個だけ、残しておいたんだった! 普通のモンスターボールよりも、性能の高い、スーパーボール…!! これなら、あれくらいのピカチュウ、バトルしなくても簡単にゲットできるぞ! そろ〜り、そろ〜り・・・ピカチュウに気づかれないように・・・。 『カゲッ!』 わわわ、しっ、静かにしろよ、ヒトカゲ!! ピカチュウに気づかれたらどうするんだよ!! 『クゥ〜ッ』 必死になって、ぼくの足を、頭と腕で押さえてるヒトカゲ。 な、なんだぁ? ピカチュウを捕まえたらいけない、と言いたいのかなぁ? …はは〜ん、分かったぞ。 ヒトカゲ、お前、ピカチュウに嫉妬しているんだろう? ぼくがピカチュウを捕まえて、お前より可愛がるかもしれないからイヤなんだろ? でもさ、ヒトカゲ。 お前だって、仲間が増えたら嬉しいと思ってくれるだろう? それにぼくはピカチュウばっかり可愛がったりなんかしないさ!! …そりゃ、ピカチュウは可愛いけど…あ、いやいや、 ヒトカゲも同じくらい、可愛がってやるんだから。 だから今は静かにしてくれよ。 『クゥ〜ッ クゥ〜ッ』 ・・・あーもうっ! 「うるさいなぁ!!」 思わず大声を出してしまう直前に、 ぼくはヒトカゲの瞳が鋭くなったのを見た。 そして背後にすごい殺気を感じたのもその瞬間だった。 でも、頭の中で思ったコトバは急ブレーキがきかず、そのまま口から出てしまう。 ヒトカゲの”きりさく”技がスピアーに直撃したのは、そのすぐ後だった。 キミが、助けてくれたんだね、ぼくのことを。 ・・・さっきは・・・ゴメン。 スピアーの接近に気づいていないぼくのことを心配して、 ちゃんと教えてくれてたんだよな。 それなのにぼくは・・・ 『カゲ?』 ヒトカゲ・・・ ぼくのコトバは大して気にしていないみたい。 でも、…でもな? …ぼくの方が、自分自身に対して、 すごく今、ショックなんだ…。 キミが伝えようとしていることを、理解しようとしなかったこと。 軽率に、キミにあんなひどいことを言ってしまったこと・・・。 野生ポケモンの溜まり場である森の中で、 周りに対する注意力が欠けていたのも含めて、 ぼくはトレーナーとしてサイテーだよ・・・。 そりゃぼくは、旅立って数時間しか経っていない、ヒヨっこトレーナーなんだけど、 こんな基本的なことを怠るなんて、 これから先の旅でも、トレーナーとして成長できるはずないんだ。 ちくしょう・・・っ! ぼくは・・・ぼくは・・・!! ぺろっ 「ぅわ!?」 突然のことにビックリして、思わず声が裏返った。 ザラザラした感覚が、まだ頬に残っている… ヒトカゲ、お前・・・ ・・・ははは、しょっぱかったろう? さっきまで沈んでいたのに、突然明るくなったぼくを、 ヒトカゲは不思議そうに見上げていた。 でも、ぼくがにっこりと微笑むのを確認すると、 また今までと同じように、ぼくの少し前を、歩き出そうとする。 ぼくはおいていかれないように、リュックを背負い直すと すぐにヒトカゲの後をついていった。 あ、スーパーボール・・・。 結局、使わなかったけど・・・ま、いっか。 また、”いざ”という時が来たときに使おうっと。 今度はちゃんと周りを確認してからだ。 それにしてもヒトカゲ、お前… トレーナーの指示なしでも瞬時で判断して技を繰り出すなんて、 …やっぱり、天才なんじゃないか? よぉし。 ヒトカゲ! ぼくと一緒に、リーグチャンピオンを目指そう!! |
ポケモンのお話の公開はこれが初めてです。 いかがだったでしょうか…。どきどき。 イラストが黒白の手抜きっぽいので、 申し訳ないから、物語を付けてみよう、と思ったわけです。 私の中のポケモンの世界って、 この物語のように、ポケモンはアニメよりももうちょっと動物的な印象です。 すっごく意志疎通ができるのは、やっぱりそれなりに腕のあるトレーナーだけが できることかなぁ、なんて思っています。 アニメの、人間のコトバをポケモンがキチンと理解するってのも なんだか素敵なんですが…やっぱり、そういう所に価値や喜びを持たせたいなぁ、と。 物語を書き慣れているわけではないので、 書き漏れはないか、トレーナーの心情の移り変わりをきちんと描写しきれているか、 何度も確認しながら書いたつもりですが、 それでもやっぱり穴はあると思います。 次に書くお話はこれよりもしっかりとしているように精進します。 あ、どういう所がマズイか、教えてくださると嬉しいです。 良かった所もあれば、合わせてメールか掲示板でハルミにコンタクトをくださいv それにしても、簡単に済ませるつもりが、 ダラダラと長くなってしまった・・・。 やっぱり、好きなものはやりたくなるものなのかな。 ポケモン、大好きです! written on 04/03/30 |